時間が止まっている

「時間が止まっている」

 彼の名前は、A.R(仮称 以下Rさん)さんと言い、現在25歳になります。
Rさんと出会ったのは中学1年生の時です。お母さんに連れられてフリースクール地球子屋に来てくれました。

 Rさんは、当時からとにかくテレビゲーム(プレステなど)が好きな子どもでしたが、自分の事や気持ちを話すことが苦手でした。幸いにもフリースクールには1つ年上の子どもがおり、お兄さんのように接してくれたのですぐに友だちとなりました。

 その後、通信制高校に通うことになるのですが、目標がなく自分にとって嫌なこと、したくないことはしないのでなかなか通信制高校のレポートなども提出できず、何度も高校から呼び出されてやっとの思いで書き上げてなんとか単位を取ることでやっと卒業することができました。

 そんなRさんをご家族は「いつか自分と向き合って動きだしてくれるだろう」という思いから暖かく見守ることにしました。
ところが、高校卒業後もなかなか動きださないRさんに父母も業を煮やして何度か働くように言います。
 Rさんのお母さんは企業の事務系の仕事をしているのですが、持病があることで時には生活すること自体も思いのままにならないことがあります。そういう時は母親を気遣い家事などをする一面もRさんにはあるのです。

 このままではひきこもりになると考え、フリースクールスタッフもRさんの相談に乗ることにしました。
「自分の1年後とか3年後といった将来をどう考えていますか? 何か今やりたいことなどありませんか?」

そのとき、ずいぶん長い時間をかけて言ってくれたことは、予想しなかった答えでした。
「なんだか、自分だけ時間が止まっているような気がする。中学のときに担任が友達のいうことを信じてくれなかったから」

 中学生の時のある日、教室の掃除を割り当てられた6人の中にRさんもいました。5人は先生がいないのでサボって遊んでいました。最初はいけないことをしていると思いつつRさんも遊んでいましたが、やっぱり掃除をしないといけないと思って途中から黙って教室に戻り急いで掃除をしました。しかし時間がなく、ゴミ箱のゴミを捨てることはできませんでした。
 次の日に、掃除をサボったのではないかと先生は6人を叱りました。ゴミが捨ててないことから全くしていないと決めつけたのです。6人のうち、2人はRさんだけはちゃんと掃除をしたと言ってくれましたが、他の3人は知らないと言ったため2人が嘘をついたとさらに先生は怒りました。

 Rさんは、先生は6人全員がサボったと決めつけて怒ったこと、2人の友達がちゃんと言ってくれたことが信じてもらえなかったこと、3人のクラスメートも知っているはずなのに知らないと言ったことなど他の人を信じてきた今までとは違う中学校生活にとてもショックを受けました。先生が怖いと思いました。嘘をつく友達が怖いと思いました。その時から自分はどうしたらよかったのか答えが出ずにずっと悩み、考え続けていたのです。

自分はどうすればよかったのか今でさえわかりません。そのため時間が止まったままの感覚をずっと引きずってしまっていたのです。もちろんその一件からすぐに不登校になったわけではありません。そうなるまでに学校で何度も裏切られたり、理不尽に怒られたりと嫌なことがありました。
そんなとき、自分はどうしたらよいかわかりません。心に何かひっかかるものがあると中々1歩を踏み出すことができず、5年10年と経ってしまいました。

 Rさんは、フリースクール地球子屋とつながりのあるあるボランティアサークルに参加したことをきっかけに良き先輩や友人に影響を受けながら、自分にもできることを見つけて少しずつ自信を取り戻していきました。そのサークルの先輩と同じアルバイト先に応募することができ仕事も始めました。
 アルバイト先から正社員の話もあるのですが、今はお母さんの家事をうこともしたいという自分の気持ちを話すことができたので待ってもらい、アルバイト生活しています。
 今年になって、お母さんの病状も安定してきたことから正社員になりたいと改めて伝えることができました。
今度の目標は、ひとり暮らしをすることです。

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