不登校が始まる前あたりから、家庭の中から学校の話題が少しずつ消えていくことがあります。以前は「今日〇〇ができた」「〇〇なことがあった」など自然に出ていた言葉がなくなり、保護者が聞いても時間割の話も、友だちの話も、先生の話も話さなくなる。
家族としては、この沈黙を見て、状況が分からないことにイライラした気持ちが募ったり、「触れないほうがいいのか」と気をもんだり、「でもまったく話題にしないのも不自然ではないか」とモヤモヤしたりと迷いやすくなります。
けれども、学校の話題が消えるのは、関心がなくなったからとは限りません。話題にすること自体がしんどい、うまく答えられない、家の空気が重くなる、そうした理由で避けられていることがあります。
このとき大切なのは、「学校の話をするか、しないか」を感覚任せにしないことです。家庭の中で、学校の話題をどう扱うかの“ルール”や“置き場所”を作ることで、沈黙の重さを少し減らせることがあります。
保護者の戸惑い
保護者が困るのは、「話さないこと」が優しさなのか、「話せなくなっていること」が問題なのか判断しにくいことです。
学校の話題を出せば空気が重くなる。出さなければ、何も進んでいない感じがする。
この板挟みは、見た目以上に疲れてしまうものです。
また、学校からの情報が家庭の中で宙に浮きやすくなります。提出物、配布物、行事確認、面談の話、学習のこと。どれも気にかかることばかりなのに、どう切り出せばよいか分かりません。
すると、保護者(特にお母さん)一人の中に情報がたまっていきます。、子どもと学校のあいだの“橋渡し役”として疲れ切ってしまうことがあります。
具体的な場面を紹介します。
欠席が続き始めた家庭で、保護者が子どもに気を遣って学校の話を控えるようになることがあります。最初は「今は聞かないほうがいいかな」という配慮です。
けれども日がたつにつれ、学校のプリントも目につかない場所へ置かれ、連絡帳も話題にのぼらず、家庭の会話から学校が丸ごと抜け落ちていきます。
子どもも、自分からは何も言いません。保護者は「これでいいのか」と思いながらも、せっかく落ち着いている空気を壊したくなくて、そのままにします。
学校では、担任が「最近の様子はいかがですか」と連絡をくれるかもしれません。保護者はその電話には対応しますが、受話器を置くとまた家庭内では学校の話をすることがどうしてもできませn。学校とのやり取りは大人の中だけで処理され、子どもには伝えるタイミングがつかめなくなります。
思い切って、保護者が学校の話を出してみます。
そのたびに子どもの表情が固くなるため、会話などできる雰囲気ではありません。
「プリントあるよ」
「先生から連絡あったよ」
と言うだけで、子どもがうつむいたり部屋へ戻ったりしてしまいます。
そうすると保護者は、話題にした自分が悪かったような気持ちになり、次第に何も言えなくなります。
一方で、子どもが学校のことを完全に忘れているようには見えません。
時計や曜日には敏感で、行事の時期になると少し落ち着かない様子も見せます。
保護者は、ますますどう接してよいか分からなくなります。
学校の側は、学校へ登校する機会をつくろうと行事や参加しやすい提案をしてくれます。決して家庭を追い込もうとしているわけではなく、情報共有や支援のために連絡しています。
しかし家庭の中では、その情報をどう扱うかが定まっていないと、子どもに伝えることも、伝えないことも苦しくなります。
子どもはどうなりたいか
子どもは、学校の話題を出されないことで楽になっている面もあれば、逆に気を使われている、ばつが悪いなどいろいろな気持ちが揺れうごいている感覚をもつこともあります。
話題になると苦しい。けれども、何も触れられないと、自分だけ取り残されているような、そんな感覚を覚えることもあります。
また、子どもは「学校の話をしたくない」のではなく、「突然、重い形で学校の話が始まるのがつらい」「何かを決めるような話になっていくとそれによって日常を固定されていく」と感じていることがあります。
いきなり登校の話、将来の話、理由の説明になると苦しい。けれども、必要な連絡や事実の共有まで全部なくなると、それもまた不安になる。
本人は、学校の話題がゼロの家庭を望んでいるのではなく、“扱いやすい形”で置いておいてほしいのかもしれません。
どうしたら子どもが扱いやすい形になるか
このテーマでの転換は、「学校の話は避けるか触れるか」という二者択一から、「学校の話題の扱い方を家庭内で決めておくこと」へ転換することです。
感情任せに出したり引っ込めたりすると、保護者も子どもも構えやすくなります。扱い方を少し整えるだけで、話題そのものの重さは変わります。
具体的には、学校関連の情報を三つに分けて扱うというのはいかがでしょうか。
1.すぐ共有が必要なこと。
2.保護者だけで把握しておくこと。
3.今は伝えなくてよいこと。
これを大人の側で整理するだけでも、子どもに毎回すべてを背負わせずに済みます。
次に、学校の話をする“時間”や“言い方”を検討しておきます。
ご家族が集まる食事中に、みんなの前で話すことはせっかくの家族団らんに緊張を持ち込むことになります。それはご家族にとっても本人にとっても望んでいないことではないでしょうか。
また朝起きてすぐや寝る前にについても、子どもさんにとって頭が回っていないことが多いため話をするには適していないかもしれません。
こういったことは一人ひとり状態が異なるということが大前提ですので、ぜひ子どもさんの生活やご家庭の都合などを考えて決めていく方がよいでしょう。
急に思いついたように切り出さず、お昼を食べる前に少し学校のことを話してもいい?、週末の午前中に今後のことについて話をしたい、などと日時をあらかじめ伝えておくことで心構えができます。
その際に「学校の話をするけれど、あなたの気持ちや意見をしっかり聞きたい。あなたの味方になりたい」と一言添えておくことでずいぶん受け取り方も違うと思います。
話し方については、長く話さず、事実を短く言います。情報を箇条書きなどして目に見える形にしておくのもよいかもしれません。耳だけでなく目で読むことで頭に入りやすくなる場合があります。
そして答えをその場で求めなくても大丈夫です。そして意見はいつまでに欲しいと伝えておきます。
疲れ切っている場合は、たくさんの情報を処理できないものですので、細かいことに見えるかもしれませんが、このようなちょっとしたことかもしれませんが子どもからすると落ち着くことにつながります。
こうした決め方は、子どもにとって予測可能性になります。
さらに、学校の話題と生活の話題を切り分けることも大切です。
家の会話がすべて学校に吸い寄せられると、子どもはリビングにいるだけで疲れます。
学校以外の話題、食事、天気、動画、ペット、買い物、家の小さな出来事など、生活の会話を意識して残していくことで、「家庭=学校の相談室」になることを防げます。
学校へも、
「家庭では学校の話題を急に出すと負担が強くなる様子があります。必要な情報は家庭で整理しながら伝えていきたいです」
と共有しておく学校も今の状況を理解してくれるでしょう。
まとめ
家庭内で学校の話題が消えていくとき、保護者は不安になりやすいものです。けれども、その沈黙は無関心ではなく、今はまだ扱い方が難しい状態の表れかもしれません。
だからこそ、話すか話さないかの二択ではなく、学校の話題を家庭の中でどう置くかを整えることが大切です。
すべてを聞かないわけでも、すべてを共有するわけでもない。
時間、量、言い方を整えて、学校の話題に“置き場所”を作る。
それによって、家庭の空気を守りながら、必要なつながりも切らずにすむようになります。
対応方法には順番や段階がありますので、下から1段ずつあがっていきましょう。
大切なのは、今の状態を把握することです。今の状態が分かれば、どう対応するか見えてきます。




